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第10話 ヴィンテージリネン<その1> Stories to tell


Francoise de Bonnevile著REVES DE BLANCはリネンのバイブル、グラビアを豊富に使いリネンのことを広範囲にカバーしています。その第1章は「トルソーの伝統の消滅」で始まっています。リネンと人の結びつき、手仕事、家族のあり方、その土地の文化や歴史といったことが、トルソーには集約 されていました。リネンの重要さは、どんな宝石のそれにも劣らず、女性の時間の大半はこのトルソーのために費やされたと言えるほどだったそうです。自分のため、そして娘のため。そんなリネンは台帳に記され、代々引き継がれていったのです。

パリのデパート、ボン・マルシェの記録を見ると、1910年頃の典型的なトルソーとは、6ペアのシーツ、24枚のピローケース、36枚のテーブルナプキン、3枚のテーブルクロスと12人用のダマスク織のディナーセット、24枚のディッシュタオル、12枚のハンドタオル、24枚のバスタオル、6枚のエプロンのセットであったそうです。
トルソーの訳に「嫁入り道具」が当てられますが、少しニュアンスが違うように思います。それは花嫁個人の荷物ではなく、花嫁が新しい家のため持参する、代々継がれるプレゼントだからです。
今日、そんなリネンの一部が私たちの手に入るのは、嬉しい反面、少し寂しいことでもありますが、自分の手元に来るにいたったみちのりを考えると、これからも大切に使っていこうという気持ちになります。



キッチンタオル

もっともなじみが深く、手頃な価格で手に入れることができるキッチンタオル、フランスではトーションと言われています。ヴィンテージといってもいろいろな種類のものがあり、フランスでは、19世紀中頃までのものであれば、それは間違いなく、ハンドスパン、ハンドウーブン(手紡ぎ、手織り)。1920年頃までの物の中にもそういうものを見つけることができます。



左のキッチンタオルは、1910年頃のフランス製、ハンドスパン、ハンドウーブン。まったくの未使用か、ほとんど使われていないか、これから湯通しすればわかるはずです。

当時の刺繍はクロスステッチなどのシンプルなものが多く、複雑で凝った刺繍をするようになるのは、買った生地を使うようになり、時間にゆとりができたからだそうです。
最近では、ハンドスパン、ハンドウーブンのものでは、ハンガリーやルーマニアなどの東欧のものをフランス国内でもよく見かけます。ハンガリーやルーマニアのリネンの特徴は、太目の糸で織られていること、赤や青以外の刺繍がされていること。これらの国では20世紀の中頃まで、たくさんのものがハンドスパン、ハンドウーブンで作られました。
ここ数年は、こういう東欧のヴィンテージリネンが多く救出されました。使い続けてみると、やはりしなやかさという点では、フランスもののほうに分があるように思います。



修道院が刺繍を代行するようなビジネスもあったようですが、これらは実際に修道院で使われていたタオル。右端のものは一日の割り当てられたパンを保管する袋。これはコットンで比較的新しいもの。フランス製。 キッチンタオルに数字があるのは、順番に、満遍なく使うための知恵。これが後になると、イニシャルテープや番号テープに変わっていくのです。1920年ごろのもの、フランス製。



上右とほぼ同じ頃のキッチンタオル用のロール生地、PUR FILというリネン100%の表示。この頃になると、キッチンタオルは工場で織られるようになります。
これも未使用で、今から何十年も使えそうなしっかりした生地です。フランス製。
私たちが普段目にしているものは、ほとんどがフランス製です。ドイツのものは変わった織のものが多く、北欧のものは幾何学的なダマスクが多かったりと、それぞれ特徴があります。たいていの場合、フランスのもののほうがシンプルでカワイイということになります。1930年ごろのもの、スウェーデン製。



バスタオル、ハンドタオル
テーブルクロスやベッドシーツが登場する絵画がたくさんあります。あの「最後の晩餐」のテーブルにも見事なテーブルクロスがかかっています。バスシーンで使われるリネンには古い歴史がありません。ベルサイユ宮殿でさえも、18世紀の中頃まではバスルームがなかったぐらいで、入浴の習慣ができたのは比較的最近だからです。
バスタオルが頻繁に使われる時代と、コットンが台頭してきた時代は重なるので、ヴィンテージの大判のバスタオルに出会うことはまずありません。
それに比べると、顔を洗う習慣はもっと以前からあったので、小さめのタオルはよくみうけます。


ハンドタオルはあまり注目されていませんが、時おり実用的でいいものにめぐり合います。肌ざわりをやさしくするために工夫された織り、これもハンドウーブンです。1900年ごろのもの、フランス製。



ナプキン

テーブルクロスやナプキンの刺繍は原則、白でなければ正式なものとみなされません。ただし、ランチにはピンクや赤の刺繍が認められていたようです。ダマスク織で、特別にランチのためのナプキンがあるのは、裕福な家であったと想像されます。
ナプキンのサイズは時代と共に小さくなります。19世紀初頭のものはかなり大きいです。 1910年ごろ、スウェーデン製。



テーブルクロス

純白の大きなテーブルクロスや、繊細なダマスク織のテーブルクロスは日本の家庭では使いにくく、ほとんど素通りしてしまいますが、ヨーロッパでは実用のために買い求められています。写真は農家で使われていた、ハンドスパン、ハンドウーブンのテーブルクロス。はぎ目は目立たなく、無駄も出ないよう、縫い代をとらずにこまかく巻きかがりで仕上げてあります。1900年頃、ハンガリー製。





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