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about linen リネンのはなし、あれこれ、よもやま話。

第11話 ヴィンテージリネン<その2>

今回は、特定の地方にしか存在しない、RolltuchとKelschについてです。Rolltuchは本来ドイツ、オランダ、ドイツ語圏のスイスにあったものです。Kelschはフランスのアルザス地方と、その周辺のドイツ語圏に存在しました。
ただ、その地域で今も見つかるかとなると話は別で、ロンドンやパリなどのヨーロッパの都会のアンティークマーケットのほうが見つけやすいように思います。Kelschはアメリカでの人気も高く、ニューヨークにはたくさんのコレクションを持つアンティークショップがあるほどです。

Rolltuch
英語ではMangle Clothと呼ばれることもあるようですが、これはドイツ語のMangeltuchの訳語、ドイツではRolltuchと呼ばれることが多いようです。
Rollは巻く、tuchは布のことなので、何のことかなと思っていました。


Mangle(これは、子供用のおもちゃです)
Mangle(マングル)とは、脱水に使う二つのローラーのようなものなのですが、この布が使われるのは17世紀に考案されたと言われるBox mangle という大きな機械です。

これは丈夫な枠組みの中に面棒状のものを並べてその上に石がはいった重い箱が乗っているという形状のもので、二人の人が取っ手を回してその箱を前後に動かします。洗った洗濯物を、洗ったRolltuchの上に丁寧に広げ、Rolltuchごと麺棒に巻きつけます。
そのため、その布をRolltuch(巻く布)と呼んだのです。


Box mabgle 重い箱がのっています
重い箱が動くにつれ水分が絞りとられるばかりでなく洗濯物は伸ばされプレスされるのです。

Box mangleは動かすのも大変だし値段も高いので洗濯屋さんや大きなお屋敷で使われていました。
Rolltuchは各家庭専用のものだったのでしょうか。イニシャル刺繍をしたり、ミミに色違いのラインを入れたりして、間違わないようにする必要があったようです。
洗濯屋さんまでの往復に、洗濯バスケットの上にかけて中が見えないようにするためのカバーにも使われました。





現在、よく見かけるのは1920年−1940年の時代のもので、ある程度の量の生産があったようです。
ほとんどはリネン100%のものですが、比較的新しいものにはコットンとの混紡が多く見られます。

ミミのラインは、赤が圧倒的に多く、ついでブルー、そして黄色、グリーン、グレー、パープルなども稀に見かけます。
サイズは横80−90cm、長さ2.5-3のものが一般的です。


テーブルランナーやカーテンなどに仕立て上げやすいサイズ、比較的手頃な価格、でここ数年の間に人気のヴィンテージ・アイテムとなりました。テーブルクロスにも。
ヨーロッパではダマスク織のものや、周囲に文字が入ったもののほうが、コレクターズ・アイテムとしての人気は高いのですが、私たちの周りでは、ナチュラルなフラックス地の色加減、ラインの色、パターンによって人気が変わってくるように感じます。



Kelsch
Kelsch(ケルシュ)という言葉は“ケルンの青”を意味していて、もともと飼料用に栽培される植物を指し、葉と茎から濃い青色の染料がとれるので、このような名前がついいたそうです。この植物は古くから、ヘンプやリネンと並んでフランス東部、ドイツで栽培される主要作物のひとつでした。この地域、フランスのアルザス地方の農家で作られる手織りのリネン、ヘンプは、この染料を使った特徴のあるチェック柄で、そのうちにこの布のことをケルシュと呼ぶようになりました。


19世紀の終わり頃までに織られたケルシュはすべて手織りでした。冬の厳しいアルザス地方において、農閑期の機織りは経済的に重要な意味があり、自分の家で織機を持つ人、地域の共同機織り小屋に通う人もいたり、ほとんど全員が農作業のない期間は機織りに従事していたそうです。

小さな織機のため、大きなデュベカバーを作るには布をはぎ合わせる必要がありました。その中に羽毛や藁をいれてデュベにしたり、肩デュベになりました。(最初、この小さなサイズは子供用のデュベと思っていましたが、子供用ではなく、枕のように肩のまわりを覆うデュベだと教わりました。)



ケルシュの柄は、スコットランドのタータンチェックと同じくその家に固有のものです。カトリックの家は赤、プロテスタントの家はブルーが基本になっていたそうですが、その他にも黄色、グリーン、ピンクが混じっていたりします。
ケルシュはこの地方の嫁入り道具の必需品でしたから、同じものを何枚も用意するのが普通でした。そのため、今でもその中のまったくの未使用品に出会うこともあります。袋状を閉じる部分に取り付けられた紐も未使用で、リネンの手織りのものであったり、当然それらはとても高価なものとして取引されています。


この写真のアルザスの小さな村のように、どこにでもケルシュが使われている。というわけではなく、今ではこのケルシュを見かけるのは観光客相手のお土産店がほとんどです。
このケルシュの伝統をほぼ一人で守っているのがガンデールさんで、先月のインタビューに出ていただいた小澤典代さんの「フランス雑貨の旅」に詳しく出ています。アルザスのお土産やさんには粗悪なコットンのケルシュもたまに見かけますが、リネンかメティス(コットンリネン)のものはすべてガンデールさんが一人で織ったものと思われます。

比較的太い糸から織られた布は丈夫で、100年以上前のものにもいい状態のものが多く、200年近くたっているものに出会うことも稀にあります。
19世紀後半にはこの地方にもミシンが普及していたことから、手縫いかどうかは作られた年代を知るヒントになります。メティスで作られたものや、鮮やかな赤色の発色をする染料などは、19世紀後半のものと推測されます。



アンティークは、他に替わるものがない一点ものだから高価ということもあるのですが、アンティークケルシュに関しては手織りの布が持つ美しさ、天然染料の繊細さ、丁寧な縫製などを考えると、今の水準からも妥当な価格であるように思ってしまいます。これからどんどん減っていくことを思うと、いつまでも手元に置いておきたいとついつい思ってしまいます。(みんなそう思うから、やっぱり高くなるのか?)


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